第一章 光る源氏前史の物語 第二章 父帝悲秋の物語 第三章 光る源氏の物語 還沒教完
先把和歌鋪上
(帝→桐壺の更衣の母君)
宮中を吹き渡る風の音を聞くにつけましても涙が出てきます。
そして忘れ形見の幼子(小萩)のことを思わずにはいられないのです。
どのようにお過ごしですか?
(命婦→桐壺の更衣の母君)
鈴虫があのように声を限りに鳴き尽くしましても長き夜が明けませんのと同じほど、涙もとめどなくながれて限りもありません。
(命婦→桐壺の更衣の母君)
鈴虫があのように声を限りに鳴き尽くしましても長き夜が明けませんのと同じほど、涙もとめどなくながれて限りもありません。
(桐壺の更衣の母君→命婦)
虫の声が絶え間なくしきりに鳴く草深い宿で泣いております私に
さらに悲しみの涙をあふれさせる雲の上の帝様でございますね
(桐壺の更衣の母君→帝)
荒い風を防いでおりました影が枯れてしまってからは(母親=更衣
がなくなりましてからは)小萩(幼子=源氏の君)にはいつも風が吹き、
こころ穏やかに過ごすことができません。
(帝→命婦)
亡き更衣の魂をさがしに行ってくれる幻術士がいてくれたらどんなによいだろうか。(母君から更衣の形見の贈り物を見るにつけても)
そうすれば人づてであっても魂がそこにあると知ることができるのに。
(帝→女房達)
雲の上の宮中いる私でさえ涙で曇って見えないほどの冴えた秋の月であるのに草深い宿に住む更衣の母はどれほどの思いで澄んだ月を
ながめているであろうか?
第一章 光る源氏前史の物語
- 父帝と母桐壺更衣の物語---いづれの御時にか
- 御子誕生(一歳)---前の世にも御契りや深かりけむ
- 若宮の御袴着(三歳)---この御子三つになりたまふ年
- 母御息所の死去---その年の夏、御息所はかなき心地に
- 故御息所の葬送---限りあれば、例の作法にをさめたてまつるを
第二章 父帝悲秋の物語
- 父帝悲しみの日々---はかなく日ごろ過ぎて
- 靫負命婦の弔問---野分立ちてにはかに肌寒き夕暮れのほど
- 命婦帰参---命婦は、まだ大殿籠もらせたまはざりけると
第三章 光る源氏の物語
- 若宮参内(四歳)---月日経て、若宮参りたまひぬ
- 読書始め(七歳)---今は内裏にのみさぶらひたまふ
- 高麗人の観相、源姓賜わる---そのころ、高麗人の参れる中に
- 先帝の四宮(藤壺)入内---年月にそへて、御息所の御ことを
- 源氏、藤壺を思慕---源氏の君は、御あたり去りたまはぬを
- 源氏元服(十二歳)---この君の御童姿、いと変えまうく思せど
- 源氏、左大臣家の娘(葵上)と結婚---その夜、大臣の家にまかでさせたまふ
- 源氏、成人の後---大人になりたまひて後は
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